Web表示スピード研究会

2024年 ECサイト表示スピードランキング(JADMA正会員)

もうLCP2.5秒はあたりまえ。ECサイトは1秒台の戦いへ

いま、国内で稼働しているECサイトは450万店舗を超えているといわれています。運営主体や、規模や業態もさまざまなサイトがある中、日本通信販売協会(JADMA)正会員企業が運営するECサイトは、社会的な信頼性が高く、テレビ局が通販会社の広告審査時に「JADMA会員であること」を出稿許可の必須条件とするほど、他のサイトとは一線を画しています。そのようなサイトであればサイトスピードについても取り組みが進んでいると考えて、Web表示スピード研究会では、今年初めて、JADMA正会員(2024年9月現在 414社)の運営する中で件数の多い、ファッション・靴/健康食品/コスメ・香水カテゴリーの全160サイトを対象に、PSIによるLCPスコアの調査を実施してみました。
 
<LCPランキング 上位30サイトスコア>
(JADMA正会員「健康食品」&「コスメ・香水」ジャンル)

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トップ30位まで、1.0秒から1.7秒までに35サイトがひしめく状況となりました。Amazonは「ページ表示速度が0.1秒遅れるごとに売上が1%減少する」というデータを公表していますが、実際に現場ではまさに0.1秒の争いが繰り広げられているのです。
 
では逆に、下位から20サイトのLCPはどうなっているでしょうか。
 
<LCPランキング 下位20社スコア>

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※調査対象160サイトのうち、2サイトはGoogle Page Insightで計測不能だったためランキングから除外

下位20サイトはLCPが4秒を超えており、Google Page Insightの基準では「Poor」「不良」と判定されます。この中には、大手百貨店やテレビでよく見かける通販専業会社のECサイトも含まれています。一般的なECサイトよりはマーケティングやウェブ施策をしっかりやっているJADMA会員のサイトであっても、ページスピードへの取り組みは遅れているサイトもあることがわかります。
 
計測不能の2サイトを除いた158サイトのLCPの分布をあらわしたのが以下となります。
 
<LCP分布グラフ> 
(JADMA正会員「健康食品」&「コスメ・香水」ジャンル)

158サイトのうち、半数以上のサイトがPage Speed Insightで「良好」と判定されています。JADMA会員企業ともなれば、Googleの基準で「良好」で満足することなく、さらに0.1秒でも早くなるようページスピード向上に取り組んでいることがわかります。1.5秒を切って、ようやく上位10%に入るという熾烈な戦いが最先端では繰り広げられているのです。
 
表示速度をまったく全く意識していないということはなくても、「Googleの基準で良好なら合格点」と考えていたECサイトのWeb担当者は認識を改めるべきです。ぜひ一度、ご自身のサイトのLCPスコアを測定してみてください。上位のサイトと比べてどうだったでしょうか?

サイトスピードで最も重要な指標はLCP

最も使いやすく客観性のあるサイトスピード測定ツールが、Googleの「PageSpeed Insights」(https://pagespeed.web.dev/?hl=ja))です。
Chromeブラウザのユーザーが実際にWebサイトを表示したときの状況を収集して、CWVをスコアとして表示します。無料で利用でき、URLを入れるだけで結果が表示されます(集計のためにはサイト自体にある程度のアクセス数が必要なので、ユーザー数が少なすぎるサイトの場合は結果が表示されないこともあります)。自社サイトだけでなく、ベンチマークとしている他社のスコアも確認できます。
 
▼PageSpeed Insights
Core Web Vitalに含まれる指標は以下の3つです。
LCP(Largest Contentful Paint):最初のビューポート(ユーザーから見える表示範囲)に含まれる最も大きなコンテンツ(画像、動画、テキストブロックなど)が表示されるまでの時間
INP(Interaction to Next Paint):ユーザーがサイト内で行った入力(クリック、タップ、キーボード入力)に対する応答時間
CLS(Cumulative Layout Shift):サイトの表示中に予期しないレイアウトシフト(テキストや画像の移動)が発生する頻度
 

3つの指標の中で、ECサイトにとって最も重要な指標はLCPです。LCPはWebサイトのファーストビューの一番大きな画像が表示が完了するまでの時間、すなわち訪問者が「サイトが表示された」と感じるまでの時間を表しているからです。LCPスコアが良いサイト=表示が速いサイト、LCPスコアが悪いサイト=表示が遅いサイトと言い換えることができます。
 
Page Speed InsightでサイトのLCPスコアとして表示されるのは、コンテンツの読み込み時間の75パーセンタイル値(速い方から順に並べて75%の人が読み込みを完了できた時間)です。LCPが1.4秒ということは、サイトにアクセスした人の75%、すなわち4人に3人は1.4 秒以内にページが表示できているということです。Googleの基準では、LCPが2.5秒以下を「良好(緑)」、2.5秒から4.0秒を「要改善(黄)」、4.0秒以下を「不良(赤)」としています。
 
▼LCPの閾値(https://web.dev/articles/lcp?hl=jaより引用)


LCPが「良好」の閾(しきい)値を決めるときに参照されたのが、「ユーザーがタスクにフォーカスを失うまでの待機できる時間は約0.3秒〜3秒」という既存の研究成果です。Googleは、ウェブ全体でパフォーマンスが上位のサイトを分析し、上位サイトの75パーセンタイル値でキリの良い値として「2.5 秒」という基準を「GOOD」「良好」の値として決定しました。逆に、LCPを「POOR」「不良」と判定する閾値は、「4秒」に設定したことで、モバイルサイトの26%、PCサイトの19%がLCPスコアが「不良」と判定されるようになっています。

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今回、調査したJADMA正会員158サイト(JADMA正会員「健康食品」&「コスメ・香水」ジャンル)の「LCPランキング」全データをダウンロード希望の方は、こちらからダウンロードできます。

調査概要
JADMA正会員「健康食品」&「コスメ・香水」ジャンルサイト
 ※PSIで「計測データなし」「計測不可(データがありません)」だったサイトは除外
 ※当ジャンルで公式ECサイトがなかった会社除外
◆CWVの各項目データはGoogleのPageSpeedInsightの「過去 28 日間の収集期間」データを参照
◆CWVの各項目データは2024年5月30日~6月25日期間のChrome ユーザー エクスペリエンス レポート」に基づく
※Chrome ユーザー エクスペリエンス レポート、略して CrUX は、Chrome ユーザーがウェブ上の人気ページに実際にアクセスしたときの状況を反映したデータセット
◆パフォーマンス数値に関しては、PageSpeedInsight計測環境データに準じている。
※Moto G Power のエミュレーション with Lighthouse 12.0.0
“ネットワーク スロットリング: 150 ms TCP RTT, 1,638.4 kb/秒 throughput (Simulated)
ブラウザの地域: アジア”

当該データの計測環境
OS: Windows 11
ブラウザ: Google Chrome バージョン: 127.0.6533.120
ネットワーク環境: 有線接続(光回線)
計測場所: 神奈川県横浜市内

PSI、表示スピード、コアウエブバイタル INPの各対策については